ハノンとスケール練習は何のためにやるのでしょう?
ハノンといえば「指の練習をひたすら淡々とやる」と思われがちですが、初級の段階で無理なく楽しくやる方法はあるのです。
ハノンに入る前の段階で「手の形を少しづつ少しづつ矯正してあげる」独特のウォーミングアップ術を全員毎回やります。
写真のお子さんの手の形をご覧になってください。
まだ入門して1年にも満たない生徒さんです。
ハノンは読譜力があってはじめて成り立つと思うのですが、指を見て弾かない、読譜を兼ねて片手ずつ→両手、そしていくつかのリズムパターンで弾いてみる。
レッスンの中でくどくどやらずに、まずウォーミングアップとしてサラッとやるのです。
そして各調スケール。
これは何のためにやるのかを明確にしないと子供たちは苦痛になってくる→練習してこない、という悪循環に陥ってしまうのですね。
何のためにやるのか。 これを手始めに子供たちに明確に伝えます。
将来、シャープ・フラットのたくさんついた曲を弾くのに役立たせるためなのです。
これを中級レベルになって16分音符でいきなりやらせると面白くなく、子供たちはまーずやりたがりません。ですから初級のうちにある程度読譜力がついたらすぐにやらせるのです。
テキスト通りに順番に毎回キッチリやるのではなくて、まずハ長調の指使いをキッチリやり平行調の意味をしっかり教えて、ハ長調と同じ指使いのグループを「何調、主音は何か(何の音からはじまるか)何の音に♯、♭がつくのか、コードネームに置き換えると何keyか」を説明します。
こうすることによって調性が身に付き、移調奏にも役立つのですね。
ある程度の読譜力がついてきたらなるべくレッスン初期のうちに導入しています。
生徒さん達はほとんど1年もしないうちに1冊が終わり、大きな達成感を得られていますよ。
こうしてひとつひとつ達成感を与え、そして褒める。
無味乾燥なハノンやスケールを目的を持って楽しい雰囲気で与える。
これは講師の腕の見せ所でもあります。
いろいろな性格の生徒さんがいますが、1年を通してメリハリが必要なんですね。
少し緩ませてもいい時期(発表会が終わった直後など)とバシっとやる項目をバシっとやる時期があっていいと思うのです。
いつもすべてが全力疾走ではせっかくのいい素質もやがてつぶれてしまいます。
つまり「燃え尽き症候群」ということ。
こうならないためにもレッスンにはユーモアを交えて、そして時には厳しくすることも多々ありますけれどもね。